Distortion Life

ゲーム開発者つよがエンタメを思考したら発信するブログ

「パラノーマルアクティビティ2」を観た感想は『劇場で観たのに不満』だった

ブレアウィッチ・プロジェクト以降、モキュメンタリー映画にとって、メディアの扱い方が演出の範疇として認識されるようになって、このジャンルはなかなか面白いので気に入っています。

 前作が劇場公開された時に「必ず劇場で観よ〜」と思って居たのに結局は見れず終いとなった上に、レンタル等の手段を使うのが物凄く面倒に感じている僕は、続編を観るってのに一本目を観ていないという最悪のコンディションで、公開当時劇場に向かってしまったのでした。

 でもまあ、何となくの前情報で二本目から観てもさしたる問題なしと知って居たので気にしない事にしました。グダグダしてると、また劇場公開を見逃してしまうからです。かくして僕はこの作品を劇場で観たのです。

 結果的に言えば、当初懸念した「2作目から観て大丈夫か」という点においては問題がなかったのですが、作品を評価するという意味では少々歪んだ感想を持つこととなったのを覚えています。

基本情報

パラノーマル・アクティビティ2 [Blu-ray]

パラノーマル・アクティビティ2 [Blu-ray]

 

カリフォルニアに住むレイ一家は、留守宅を不審者に荒らされたことから、6台の防犯用監視カメラを設置する。すると、その日を境に家では不気味な超常現象(パラノーマル・アクティビティ)が続発。一家を襲った恐怖の一部始終を監視カメラが記録していた……。

感想

今思えば、「パラノーマル・アクティビティ」の一作目を見ておくべきだったなと思います。残念。そう思える程度に「パラノーマル・アクティビティ2」はなかなか気に入ったのです。

 ブレア〜以降のハンディカメラ多用によるフェイク感演出は、ついにはゾンビ映画まで飛び火し今や「リアルと言えばハンディカム」の公式はもはや常識。もちろん映像演出の手法として昔から認知されていたのですが、CG合成技術の向上により「現実にあり得ないと思える状況」をハンディで撮影しているような演出が可能となり、より緊迫感を観客に与える為にこの演出が増えたのは自然な流れだと言えましょう。

 CGに求められるのはより自然な質感、存在感、であり、つまり目立たなく、より自然に「在る」事です。モーションコントロールされないカメラで自由に撮影された映像にCG合成していくのですから、時間もコストも技術も要求レベルが跳ね上がったろうと想像出来ます。

貧乏はアイデア発奮の条件

「クローバー・フィールド」を観た時はハンディカム映像の完成度に驚かされたものです。そんな中、「パラノーマルアクティビティ」が達成した貧乏作戦は記録用固定カメラの演出でした。

 これはアイデアと予算の制限が巧く合致した作戦で、なるほど!と公開当時に思ったものです。膝と胸を打つとはこの事。

 元々演出を意図しない素人による単なる置きカメラ「記録」映像が、こんなにも不安感を獲得するなんて思ってもみなかったのです。生まれて初めて観たという程の出来事ではなかったにしろ、手法や技術的制約が構築美に昇華出来た例としてエポック足り得ていたと思います。

 続編の本作では無機質なカメラポジションとアングルの防犯カメラ映像がギミックとして追加されており、演出の幅をほんの少し広げました。

 このテの作品のキモは映像的な部分だけではありません。フェイク映像がよりリアルに感じられる為の仕掛けとして、序盤の「どうでもいい日常パート」がなかなかの時間を割いて展開される部分がソレだと思います。

 結構な数の観客がこの段階で眠気に襲われてしまっているのじゃないでしょうか。これは完全に好みの話ですが、僕はこの序盤のダル感が全然平気で、むしろ演出として好きだったりします。

 あまりに日常的な映像を見せられている間に、気持ちのガードポジションが緩むのが好きというか、無意識的に怖い映画を観に来たという目的を忘れる感覚が良いんです。

 怖さへの距離が開ききった所で恐怖の演出が差し挟まれるとその差分が上乗せされてより怖がれる、ような気がするのです。クローバー・フィールドの序盤も、そういう意味でなかなか好きな演出でした。

慌てて一作目を観た

本作品を最後迄観た感想としてはなかなか悪くないなというものだったので、とにかく前作を観なくてはと直ぐ様レンタルしました。

 そして、物語的には「2」は「1」の前日譚となっているしかけがあるものの、アイデアの殆どは「1」の段階で既に出しきっていたのだという事に気がつきます。つまり、もし「1」を先に観ていたら、「2」を今程は楽しめなかったかもしれないと云う事です。

 基本的には音で驚かせるタイプのビックリ箱映画なので大きく手法が変わる部分はなかったのですが、シチュエーションの不気味さで言うと、後から見た「1」の方がダントツに良い感じでした。オチもしかり。

 そう云う意味では「2」の観客として、僕は「良いお客さん」だったと言えますね。「1」を観ていたら「2」ではサラリと流せるなと思う部分が結構あったからです。「1」を劇場で見なかったのは本当に残念です。

怖がる前提

「ブレアウィッチ〜」も「パラノーマル〜」も、古くは「エクソシスト」もそうですが、こう云った海外オカルトものは日本人の「怖がれる範囲」が最初から制限されています。

 劇中に登場する日常風景が本当の意味で日常にないからです。物語の舞台となる家々が、日本の中産階級ではあり得ない豪華さで、ベッドルームやベッドそのものも大き過ぎます。日本人にとっては「呪怨」に登場する一戸建てのほうが圧倒的にリアルで身近な分、より怖さが増しますよね。

 これは映画を観終わった後にも影響絶大で、つい似たようなシチュエーションと風景を目にしたり思い出したりすることで、映画を観終わった後に何度でも怖がる事が出来るというコストパフォーマンスにも繋がります。

 「ブレアウィッチ〜」に出てくるような林は日本で見る事が滅多にないし、防犯カメラを3台も設置するような家に住んでいる人は日本では限られています。だから「パラノーマル〜」においても、音や演出で驚かされるのを楽しむ事は出来るのですが、観終わった後の日常までその残響が影響する事がないわけです。

日本の監督にお金を

僕はこの部分についていつも凄く勿体ない気持ちになります。生活環境次第で、製作者の創造的な意図を完全には享受し切れない事が確定しているのですから。もっと呪怨のような作品が海外で公開されて、日本人の才能にお金が回ってくればいいのになと思うんですが。白石監督とか、白石監督とか、白石監督とか。

 いずれにせよ、「1」を観てしまった今となっては、「2」は「1」程ではないけどなかなか良かったね、という感想に落ちついています。気持ち悪さで言えば「1」がダントツで他作品と比べても、本当に良い演出をしているなと思いました。

 「1」未見の人は、是非とも部屋を暗くして一人で観る(まあ二人でもいいや)事をオススメします。あまり後に引かない、「後腐れないドッキリ」を楽しめますよ!

最後の不満 

さて作品の感想はこういった感じなのですが、えらく腹の立つ件がありました。それは、日本の配給元が調子をコいた追加を行った事です。こらは、劇場公開時の事なので、ソフトではカットされているかもしれませんが。どう云う事かと云うと、作品の冒頭で概ね次のようなテロップが映し出されたんですね。

 「物語の最後に衝撃の事実が明かされます。スタッフロールが終わるまで席を立たれませんよう。

 正確な文言ではないけど、なんだか作品性の薄い事務的なニュアンスと日本語で書かれている事に少々の違和感を感じはしたものの、作品の性質上そういった演出もありそうだと思えて、まあいいかと流したんです。

 元々僕はどんな作品でも劇場が明るくなるまでスクリーンを観ているタイプだし、特には気にしなかったというのもあります。そして、物語は終焉を迎えて一先ずの着地をします。

 この作品は前作同様一切の音楽的演出が無く、もちろんスタッフロールも延々と鳴き声やノイズ音ばかり。この気まずさ、狙いとしては秀逸。しかも全てのクレジットが流れ終わった後になかなかの長さで「無音で真っ黒」という時間が用意されていて、これも狙いとしては秀逸。最後の最後まで不安を掻き立てられるわけです。

 で、ここまで何も衝撃の事実が無いのであれ?と思っていると、

「急告:続編制作が決定 今秋公開予定!」

 と無粋な日本語で書かれた文字が映し出されました。この言葉を失うアイデア誰の思いつきだろうか……。あまりにも酷くて日本人担当者を呪いたくなりました。

 この事に腹を立てた僕は結局続編は未だに見ていません。大人げないかなー。■■

written by つよ