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Distortion Life

ゲーム開発者つよがエンタメを思考したら発信するブログ

「アイアムアヒーロー」を観た感想は『これで日本はゾンビでも戦えるぞ!』だった

映画 ゾンビ ホラー

先日、エキスポシティなる場所に家族で行ってきました。

 関西圏にお住まいの方はご存知かもしれませんが、元々はエキスポランドと云う遊園地があった場所に出来た、巨大レジャー施設です。このエキスポシティにはシネコンもありまして、以前から気になっていた「アイアムアヒーロー」を観てきました。

 もう語り尽くされた事ですけどまたかよとか云わないで!これは云っておかなければならないのです、何度でも!漫画原作の実写映画化、と云う言葉と云うか売り文句?を聴く度にいつも思う事があります。

漫画原作の映画化について回る不安

「ソレ、誰が嬉しいか想定してんだろうな?あ?」

 悪態満開です。喧嘩売る気アリアリです。シリーズ累計***万部突破!大人気コミックが遂に実写映画化!とかって云われた時に、まずもって原作ファンは不安を感じるはずです。自分が大好きな作品が原作レイプされてしまうのでは……、と云う素直な不安感。漫画原作を愛していればいる程、この不安感は大きくなるでしょう。

 漫画に最適化されてきた物語は、そもそも実写映像に向いていません。ギリギリアニメ化はセーフ圏内ですがそれでもほんっとにギリギリです。漫画はスピード感と音声が読者に委ねられているメディアなので、その部分を一意に定義してしまう事は非常に分の悪い戦いを云えるんじゃないでしょうか。

 それを最も絵的な再現が遠い実写にしてしまうなんて。

 さて、本作はどうだったんでしょうか。結論から書きますととっても素晴らしい出来栄えで驚きました。

原作基本情報

アイアムアヒーロー コミック 1-20巻セット (ビッグコミックス)

アイアムアヒーロー コミック 1-20巻セット (ビッグコミックス)

 

鈴木英雄。35歳。漫画家のアシスタント生活。妄想の中でしか現実に勝てず、そんな自分に付き合ってくれる彼女との仲にも、不安と不満が募る。だがある日、現実の世界が壊れ、姿を変えていき…!?異才・花沢健吾による極私的サバイバルパニックホラー!!

感想

まず前提ですが、僕はこの原作を全く読んでいませんでした。つまり、最大限にこの映画作品を楽しむ事が可能な環境だったと云えます。うーっすらとゾンビものらしい、くらいの情報は入ってしまっていましたが、それでもその程度です。もしかしたら、品川監督の作品*1のようなものかもしれないし、オーケン原作の作品*2のようなものかもしれないワケです。

 自分で書いていて、なんと分の悪い博打をしたものかと感心してしまいますね。

 まあそんな博打に手を出してしまう程度には、僕はゾンビものが好きです。極々稀に出現するアタリ作品に期待を寄せてしまうワケです。コレ、相当良くない性質ですよ。「ショーン・オブ・ザ・デッド」に出会う為に何百と云うオブザデッド系駄作を大量消費するって意味ですからね。

 しかし。

 いつでもゾンビものを観る時はワクワクしてしまいます。本作とてちゃんとワクテカしながらポップコーンを頬張っておりました。

ゾンビものの基本をしっかり押さえている

とにかく序盤の展開で最高だったのは、ゾンビものの超基本を押さえてくれている事でした。つまり「日常」がしっかり描かれていた点です。スピード感の差はあれど、やはり安穏とした日常が、ある瞬間から突如として崩れ去り、状況を把握する間もないまま惨事が雪崩のように次々起こってしまう部分は、ゾンビものの醍醐味の一つではないでしょうか。

 一番怖いものは理解出来ないもの、だと思います。人智を超えた現象や存在は、理解出来ない部分にこそ、その恐怖の根本が潜んでいると思うんですね。

 アイアムアヒーローはそう云った意味で満点です。

 どうしようもなく平凡でつまらない問題だらけの日常が、これでもかと云わんばかりに描かれます。このどうしようもない感じが後にやってくる混乱を引き立てるギャップとしてキいてくるわけですから、手を抜いてはいけないパートだと云う事を良く理解されているなーと思い、嬉しくなってしまいました。

ゾンビ(ZQN)の表現が秀逸

原作を読んでいないので、この表現が原作の手柄なのか映画の手柄なのか知りません。が少なくとも、この表現を再現している映像は大いに評価して良いなと思います。

 ソンビに相当する存在である「ZQN」は生前の記憶に従い、生前の「日常」をただただ繰り返す行動をとると云うアイデアは、本家のジョージ・A・ロメロ監督の作品でも、「ランド・オブ・ザ・デッド*3」において採用されていた設定です。

 つまり古臭いやり口ではあるんですよね。

 ただ、その表現方法が素晴らしかった。ロメロゾンビは基本的に走りませんでしたが、昨今の流行に合わせて今作のZQNはガッツリ走ります。その行動が、ちゃんと当人の日常を強く反映しているのが、いい演出です。

 「いらっしゃいませ」とつぶやき続けるショップ店員。携帯電話を耳に押し当て話を続けるサラリーマン。見えない棒を目指して高跳びを繰り返しながら頭部を陥没させている体育大学学生。これこそ、ロメロ御大がDAWN OF THE DEADで表現していた原風景じゃないか!恐らくこのあたりは原作でしっかり表現されていたんでしょう。あまりに良く出来ていました。

 またZQNの気持ち悪さを際立たせる為の、眼球表現も素晴らしかったですね。グルリと眼球が回転し、片目だけがあらぬ方向に向いてしまう、と云う演出。これも漫画的表現なので恐らく原作準拠なのでしょうが、実写としての質が非常に高かったように思います。ゾンビものでひっっっさしぶりに「怖い」と思えました。これは凄い。

 合わせて、グロ表現も素晴らしかったと思います。冗談のような赤さの専決が噴水ばりに発射される事もなく、しっかり汚く気持ち悪い表現に徹しています。こう云うのをちゃんとヤって欲しいですよねえ、他の作品も。あっぱれです。

物語の展開はいたって普通

これは褒め言葉でもありますが、どうと云う事はないって意味でもあります。ショッピングモールと云う舞台は、ゾンビものでは定番中の定番ですからまあ普通よね、とは思います。大量消費社会を風刺した元ネタの意味合いも踏襲しているし、違和感ありませんでした。

 物語の後半に向かって安全地帯であった屋上が崩壊し脱出を余儀なくされる展開も、何度も見て来たゾンビあるある展開です。ただこの作品については、前半の描写があまりに出来が良い為に、後半の既視感がマイナスとして機能してくる事は全然ありませんでした。むしろ安定感さえ感じる程です。まあこれは好意過ぎるな意見かもしれませんけども。

 いずれにせよ、物語のオチらしいオチは用意されていませんでした。

 そんなのゾンビものを散々観てきた側からすると、へっちゃらです。こういう世界で起きた一場面のエピソードでした、と云う理解で全然呑み込めてしまいます。ただまあ、半ZQN?みたいな存在の少女がまったく謎のまま放置されていた事は、続編への布石なんでしょうかね。興業的に成功したら続編作るきっかけを残しておいた、のかな。ZQNに噛まれても無為に殺戮を繰り返す事なく死にもしない存在ですから、きっと原作では重要な物語駆動の役割を持っている事でしょう。

 僕は映画だけを楽しもうと決めたので、原作を読まないでおくつもりですから、是非とも続編を公開してもらいたいものです。

大泉洋について

実は、彼の出演作品を観た事がなかったんです。結構映画も出演されていますよね。この作品での大泉洋さん、むっさ良かったです。ダメな男の演技も間も、ラストで何百と襲ってくるZQNをひたすら破壊しつづけるシーンでの逼迫した演技も、むっさ良かったです。侮っていたワケではありませんでしたが、かなり好きになりました。彼の主演作品は今後も観てみたいなと思っています。

最後に

まあ簡単に云うと、大絶賛です。このクオリティで映像を作れて、映画として完成させる事が出来るのなら、日本はまだ映画と云うメディアで海外でも戦えるなと素直に思いました。■■

ステーシーズ―少女再殺全談 (角川文庫)

ステーシーズ―少女再殺全談 (角川文庫)

 

*1:品川監督の作品:映画「Zアイランド」の事。

*2:オーケン原作の作品:映画「ステーシー」の事。

*3:ランド・オブ・ザ・デッド:『ゾンビ』の生みの親であるロメロが、約20年ぶりに撮影しファンを驚かせたゾンビ映画。一握りの富裕層が多数の貧困層を力で支配する覇権主義の姿を色濃く取り入れている。時系列上ではゾンビ発生から3年後と云う設定も地味にアツい。

written by つよ