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Distortion Life

ゲーム開発者つよがエンタメを思考したら発信するブログ

「ドント・ブリーズ」を観た感想は『最近珍しい教科書的優良作品だなー』だった

映画を劇場で良く観る年末でした。いや観せてもらってたと云いましょうか。2歳児をもつ家庭ながら一人で休みの日に2時間の自由を享受出来るのは、一重に妻の有り難い温情によるものです。妻は、僕にとって映画を劇場で観る事にどれ程の意味があるのか、どれ程の活力になるのか、を理解してくれている数少ない人類です。感謝しまくりで感想を書き綴りたいと思います。

 いつもの通りネタバレを厭わず書きますので、ご覧になる予定のある方はご注意くださいませ。

基本情報

 

ストーリー
盲目の老人が、独りで暮らす古い屋敷。
大金を手に入れて、
簡単に逃げられるはずだった―― 音を立てるな。息を殺せ。 全米震撼!2週連続No.1大ヒット!
親と決別し、街を出るため逃走資金が必要だったロッキーは、恋人のマニーと友人のアレックスと一緒に大金を隠し持つと噂される盲目の老人宅に強盗に入る。だが彼は、目は見えないが、どんな“音”も聞き逃さない超人的な聴覚をもつ老人――そして想像を絶する<異常者>だった。
真っ暗闇の家の中で追い詰められた若者たちは、怪しげな地下室にたどり着く。そこで目にした衝撃的な光景に、ロッキーの悲鳴が鳴り響く――。 彼らはここから無傷で《脱出》できるのか――。

感想

この作品、プロモーションで流されていたあらすじや設定を見ただけで、こらオモロイなと感じましたよね?いやー、これはかなり良く出来た仕掛けです。大掛かりなセットや特殊メイクを施す事なく緊張感を演出するには、最高のシチュエーションを見つけたと云えますな。

 「このテが残っていたか」

 過去優れた創作物の出現時に、数多の凡人達(僕含む)が膝を打ちながら漏らして来た言葉です。本作は正にその典型だと思います。

 登場するのは総て生きている人間と生きている犬だけです。つまり亡霊とかクリーチャなんかは登場しないんですね。人間が1番オッソロシイ系の物語です。

悪人が酷い目にあう話のカタルシス

セキュリティ会社の社員を父親に持つ若者とその悪友と悪友の彼女の3人組は、セキュリティを管理している父親から鍵を盗み出して、裕福な家の留守に侵入し、もし捕まったとしても重罪になる額面を下回るよう計画しながら窃盗を繰り返しているんですね。

 まーまー最悪な若者達です。

 観ている側の気分としては、この悪さをしている若者達には感情移入しないところからスタートします。ひっでーなーこいつらー、みてーな感じです。しかし悪友の彼女だけ、お金を必要とする理由が描写されます。毒親の存在から逃げ出したい自分と妹。あコイツは生き残るな、と判りやすい演出ですよね。こう云う丁寧さ、大事。

 さて一見、哀れな盲目の退役軍人じいさんには役名すらありませんw。ただ「盲目の男」としてしか表現されないんです。この盲目の男をスティーヴン・ラングが演じています。有名な役で云えば、「アバター」のラスボス軍人でしょうか。ナイフの扱いがカッコよかったですよね。

 あの役者が演じている老人ですから、まームキムキなんです。超屈強な老人。肩なんてパンパンですからね。カッコいい肉体だわー。顔も渋い。つーか怖い!こんな顔面のじいさんの家に侵入するなんて出来ませんぜ、フツー。

 冒頭間もなく哀れな3人の若者は、このいかつい顔面の老人宅に忍び込みます。結構雑な計画で。すっかり舐めとるんですね。ここで犬が一旦登場しますが、睡眠薬入りの餌でまずは排除。老人の寝室にも睡眠薬の気体をバラまいてまずは一安心、てことで出っかい鍵が掛かった扉を破壊しにかかります。

 ここで、今まで一度も使っていなかった銃を取り出してしまう軽率な悪友。

 いいですねーいい展開です。銃を使ってしまった事により、正当防衛が成立し殺されたとしても文句を云えないお膳立てが整いました。

 整いました!

 老人はすっかり寝ていると信じ切っている悪友はガンガン扉を壊そうとしますが、あと一歩のところで、すぐそばに老人が立っているのに気が付きます。音もなく忍び寄る筋肉ムキムキの盲目老人。キッター死亡フラグ立ちまくりー。で、あっさり悪友君は銃を奪われて顎を撃ち抜かれて逝ってしまいます。

 この銃声が、僕には試合開始のゴングに聴こえました!w

息を殺して観る映画

でココカラは、盲目の老人からいかにバレずに脱出するかって話になるわけですが、演出がイイものですから、とにかく疲れる時間(褒め言葉)がしばらく続きました。観てるコッチまで息をひそめてしまうのは、演出の技ですな。これ、ホラーやスリラー映画の醍醐味の一つね。

 落ち着いて考えれば、眼が見えていない相手に2人で挑むのですから全然有利なハズなんです、相手が銃を持っていようとも。でもそう感じさせないのは、スティーヴン・ラングから沸き立つ威圧感が強烈だからでしょう。

 こいつには勝てない……。無理すんな、とっとと逃げろよ……。

 途中ブレーカーを落とす場面があり地下室で完全に真っ暗闇になってしまうんですね。逃げ惑う男女の若者はお互いの位置が判らず、しかし声を上げるわけにもいかない。それでも盲目の老人は元々見えていないので、ガンガン距離を詰めてくる。時々かなり正確に射撃してくる。

 ここむっさ怖い!

 絵的には暗視カメラで、回りが見えてない人間と見えてないけどそれが普通という人間を追いかけっこさせてるのを撮ってるだけなのに、むさむさ怖い。これは本当にいい仕掛けを思いついたものですねー。大きなコストをかけずに見事な恐怖の場面を創り出していました。怖がりながら何度も感心してしまいました。

途中で感情移入先が変わる楽しみ

これもまた、優れた作品でよくみかける展開です。つまり、最初は悪さを企む若者達が失敗すればいいのにと老人側の視点で物語を観進めていたのが、途中である事実が露見した途端に、突如若者側の視点で物語の行く末を見守るようになるんです。

 その事実とは。

 逃げる途中地下室で、縛られて口も塞がれた女性が突然現れるんです。むっさビビりました。この女性、かつて老人の娘を事故で轢き殺してしまったにも関わらず金持ちだった為に高額の保釈金を積んで無罪放免となった過去を持っています。その事が許せなかった老人は彼女を監禁し、自分の子供を妊娠させ、娘の代わりを作り出そうとしていたと云う、超飛び道具なサイコ野郎であった事が判るのです。

 イイね!

 哀れな存在だったのは、最初から若者達だったと云う絶望的な展開。後ろめたさを抱えていた老人は、最初から若者達を帰す気などなかったのでしょう。

演出の見本のような作品

全編を通して感じたのは、とにかく無駄のないシナリオ構成と演出の教科書的丁寧さでした。ちゃんとシーン毎にフリオチが用意されていながら、一つの行動が次の展開の材料として機能していく流れは見事だったと思います。

 何気ない出来事が、後から意味を持つ仕掛けなどは、よく練られています。

 あまりに優等生な出来栄えなので、意外性と云う意味では突出したモノがないとは云えますが、この作品が持つ高品質なエンタメ性はそうそうお目にかかれないものでしょう。まあ、盲目の退役軍人と云う設定だけても充分でしょうね。

 犬の使い方もなかなか良かった。地味に怖いしね。

最後に

盛大にネタバレしてしまいましたが、全然大丈夫です。物語の仕掛けなんてスリラー映画にとっては添え物程度の意味しかありませんから。もしあなたがまだ本作を観ていない人類なら、是非劇場に足をお運びください。■■

written by つよ